気管支喘息とCOPDが重なった病態
気管支喘息−COPDオーバーラップ症候群(ACOS)について

 喘息とCOPDはいずれも「閉塞性障害」(閉塞性障害についてはこちらの記事を参照ください)という空気の通り道が狭くなる呼吸器疾患に属し、特に喫煙歴があるご高齢の方では両者の区別が難しい場合も多いと言われています。

気管支喘息−COPDオーバーラップ症候群(ACOS)とは?

 以前から気管支喘息とCOPDの両方の要素を持つ患者さんがおられ、「COPD合併喘息」「オーバーラップ症候群」などの名称で呼ばれていましたが、2014年COPDと喘息の国際委員会で名称が統一され「喘息ーCOPDオーバーラップ症候群」と呼ばれるようになり呼吸器科医の中でトピックとなっています。

どのくらいの人がACOS?

 COPD患者さんの中でのACOSの方の比率は20-50%前後と言われており、逆に高齢の喘息の方の中でCOPDを合併していると考えられる方は20-30%前後と報告されています。

ACOSの診断について

 慢性的な咳・痰・息切れや「ぜーぜー」などがあり、喫煙歴がある方のうち、画像診断やその他の検査で結核や間質性肺炎など喘息・COPD以外の病気を除外されたを中心に、喘息とCOPDのどちらの要素が強いか以下のようなポイントを中心に検討していきます。

  • 発症時期は比較的若年かもしくは40才以上での発症か
  • 息切れ・「ぜーぜー」などの症状が発作的に起こるか日常的であるか
  • 夜間や早朝に症状が強くなるか
  • ホコリや各種アレルゲンなどが引き金が関与しているか
  • 喘息やアレルギーの家族歴があるか
  • X線検査で肺の膨張が強いかどうか
  • 呼吸機能検査で気流閉塞の変動があるか(可逆性があるか)

上記のような検討で気管支喘息の要素・COPDの両方の要素を複数持つ場合、総合的にACOSと診断します。

ACOSの治療について

 上記のような検討から、ACOSと診断されればまずは吸入ステロイド薬(喘息の標準的な治療薬)で治療を開始します。また状況に応じて長時間作用型の気管支拡張薬(β刺激剤や抗コリン薬など)の追加を検討します。
 
 喫煙歴のあるご高齢の方でいわゆる「ひゅーひゅー」「ぜーぜー」が起こる方は多くおられ、かねてから「喘息」「肺気腫」「喘息の気」など様々な呼び方がなされてきました。上記のような方の治療法についてもこれまで確固とした方針は示されていませんでしたが、近年ACOSという病態の概念が整理され、治療法も標準化されつつあります。
 喫煙歴や症状から自分も該当するのでは?と思われる方は一度ご相談いただければと思います。

アレルギー性鼻炎と喘息の関連について

アレルギー性鼻炎と喘息 ー切ってもきれない関係ー

 鼻から咽頭・気管・気管支は空気の通り道としてつながっており、アレルギー性鼻炎と気管支喘息は、昔から深い関係があることがよく知られています。それを反映して気管支喘息の患者さんの7-8割にアレルギー性鼻炎の合併があり、逆にアレルギー性鼻炎の方の2-3割に喘息の合併があると言われています。2つの疾患に関連が認められる理由としては、口呼吸になりやすいことや、アレルギー系の炎症細胞が共通であること、お互いが神経系を介して影響を及ぼし合っていることなどが考えられていますが、はっきりとした原因については未だわかっていません。

2つの疾患を合併した場合の治療で考えておくべきこと

 アレルギー性鼻炎と喘息の合併があった場合の基本方針としては、いずれか片方のみが悪化している場合にはそちらの治療を強化し、双方が悪化している場合には両方の治療を強化するということになります。ただし一般的には、増悪時には鼻炎と喘息のいずれもが悪化していることが多い印象を持っています。

本当に鼻炎だけ? 喘息だけ?

 アレルギー性鼻炎として長年治療を受けておられる方で、よくよく話をうかがうと風邪をひいた後に咳が長引いたり、「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」を自覚しているという方もこれまでおられましたし、実際に胸で「ぜーぜー」が起こっているけれども、鼻炎の症状がかなり強いため、ご本人はあまり自覚されていないということも稀にあるようです。お互いの疾患が合併することも多いという事実を多くの方に知っていただき、そういう目でご自分の症状を是非見なおしていただけたらと思います。