慢性閉塞性肺疾患 〜COPD〜 について

COPDって何?

 慢性閉塞性肺疾患(英語の頭文字からCOPDと略されます)は、タバコの煙を主とする有害な物質を長期間吸入することで肺に炎症が起こり、徐々に息切れや咳、痰などの症状が現れる病気です。
 以前は「肺気腫」「慢性気管支炎」という名前で呼ばれることもありましたが、近年「COPD」という名称に統一されました。長年の喫煙が原因となっていることがほとんどで、肺の生活習慣病とも言えます。

COPDの症状とは?

 最初は階段や坂道の昇り降りの際に感じる「息切れ」で気づかれることが多いです。
 また慢性的に咳や痰が出たり、「ひゅーひゅー」「ぜーぜー」といった喘鳴と呼ばれる症状が出ることもあります。

COPDの診断について

 まずはご本人の喫煙歴や症状などをうかがい、その内容からCOPDを疑い呼吸機能検査という検査を行います。(息を思い切り機械に向かって吹き込むあの検査です(^^))。COPDの方では、息の吐き始めに吐ける空気の量が減るため、1秒間に吐き出せる息の量の割合を計算し、その値が診断の指標になります。
 また、X線検査などでCOPDによく似た症状を起こす他の疾患の除外を行うことも重要です。

COPDの治療について

 禁煙ができていない方の場合には、喫煙をやめることが最も確実な治療法になります。
 またCOPDの方がインフルエンザや肺炎にかかると肺機能が一層悪くなるため、予防のためのインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種も重要です。薬物療法としては気管支を広げる働きを持つ薬剤を吸入します。
 COPDの方は呼吸に通常より多くのエネルギーを使うため体力や筋力が落ち、さらに呼吸が苦しくなるという悪循環に陥りやすく、十分な栄養を摂ることも必要です。

長引く咳の原因 −百日咳とは?−

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百日咳とは?

 百日咳といえば、子供さんがかかる病気というイメージを持たれている方が多いかと思います。
生まれたばかりのお子さんがかかると命に関わることもあり恐れられていた百日咳ですが、1950年台に日本で予防ワクチンが導入され、以後患者さんの数は減少しました。
 しかしワクチンの効果は一定期間経過すると弱くなることが知られており、最近はむしろ成人で百日咳の患者さんが増え、2006年には四国の大学で集団感染が報告されるなど、むしろ大人の病気として注目されています。
 呼吸器科診療では成人の長引く咳の原因として百日咳は重要で、3週間以上続く咳嗽の2-3割が百日咳によるものと考えられています。
 

百日咳の症状について

 いきなり発作的に咳が連続して始まり、息も吸えないほど続くのが特徴で、咳の合間の息を吸うときに「ひゅーっ」という音が出る「笛声:whooping」と呼ばれる症状が有名です。(youtubeなどで「whooping」と検索していただくと動画で見られます。)咳発作は夜間に起こることが多く、咳発作の最後には吐き気が起こったり実際に吐いてしまうこともあります。
 最初は風邪と思っていた咳がおさまらず、発症から1-2週前後で上記のような特徴的な苦しい発作咳の咳が出始めます。2-4週前後から次第に咳は減っていきますが、長い人は2−3ヶ月咳が続くこともあるため、「百日」という名前も決して大げさではないかと思います。
 

百日咳の検査について

 発症早期には実際に菌を排出しているため、咽頭からの菌の培養などが可能とされていますが、咳が続くという訴えで呼吸器科外来に来られた時には菌の排出が減っている時期になっていることも多く、なかなか培養検査などは難しいのが実情です。
 実際の診療では、上記のような特徴的な咳から診察医が臨床的に診断したり、血液検査で百日咳の抗体を測定し、総合的に判断します。ただし、抗体検査の結果が出るのには一定の時間がかかることや、厳密には抗体検査を数週間の間を置いて2回行わないと、抗体の上がり具合がわからないことも多く、百日咳と確定診断することは難しい場合も多くなります。
 

治療について

 発症初期に有効な抗菌薬を内服すれば、咳などの症状をやわらげることが可能ですが、実際にはある程度時間が経過し「長引く咳」となってから呼吸器科外来に受診される方が多いのが実情です。その時期には残念ながら抗菌薬を服用してもかかった方本人の咳はおさまらないことが知られており、抗菌薬治療ははむしろ排出する菌を減らして他の人への感染を防ぐという意味合いが強くなります。

呼吸機能検査って? 〜拘束性障害と閉塞性障害〜

 
 以前の記事(呼吸機能検査って?〜呼吸機能検査で調べる肺の容量・値について〜)では呼吸機能検査でどのような値を測定するのかについてお伝えしました。

今回はその値からどのように病気を区別していくのかをお伝えしたいと思います。

拘束性障害と閉塞性障害について

 正常の人を100とした時の肺活量の値(%肺活量)と、1秒率を元に以下の図のように病気を区分して考えます。

 1秒率が70未満の場合は閉塞性障害、%肺活量が80未満の場合は拘束性障害という区分に分類されます。また1秒率、%肺活量ともに低い場合には混合性障害と分類します。

 閉塞性障害のイメージとしては、気道(空気の通り道)が狭くなるタイプの呼吸の障害で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息などが含まれます。

 拘束性障害は、呼吸をできる肺の容量が少なくなるタイプの障害で、間質性肺炎(肺線維症)、じん肺、肺を手術して一部切除した場合などが含まれます。

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 近年、タバコによる生活習慣病としてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が社会的に大きく注目されるようになり、それに関連して「肺年齢」という言葉を耳にされた方も多いと思います。
 それについては別の記事(肺年齢 〜肺の実力を試してみませんか〜)にてご紹介したいと思います。

長引く咳の原因 ー咳喘息についてー

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 喘息というと呼吸をする時に「ひゅーひゅー」「ぜーぜー」が起こる病気として皆さんご存知の方も多いと思います。「喘鳴」と表現される上記の症状は喘息に典型的な症状ですが、喘鳴や呼吸困難が出ず、咳のみが症状として現れる「咳喘息」という病気があります。

 この病気は喘息の前段階もしくは亜型と考えられていて、無治療の場合一般的に30%前後の方が喘息に移行するといわれています。

 咳喘息は長引く慢性的な咳の原因として頻度が最も多く、呼吸器外来をしていると咳喘息に典型的な症状の患者さんが多く来られ、正しく診断をして適切な治療をすると咳が劇的に減り、患者さんに喜んでいただけることも多いため診療側としても診療しがいのある病気の一つです。

咳喘息の咳の特徴としては

  • 喀痰はそれほど多くなく空咳中心
  • 就寝時から明け方に咳が多い
  • 冷たい空気、タバコの煙、会話、運動、飲酒、精神的緊張などが誘引となって咳が出る
  • アレルギー素因のある人に多い

などがあります。

咳喘息の治療としては喘息に準じた治療(吸入ステロイドなど)を行い、治療を開始すると比較的速やかに咳が消失することが多いのもこの病気の特徴です。

 風邪を引いた後に咳が長引きがちだけどいつも我慢しているという患者さんも多く、そういった患者さんの中にも咳喘息の要素を持った方が比較的多くおられます。

 咳が出ていると周りにも気を遣いますし、咳がひどい場合には不眠になったり食欲が落ちたりと本当にやっかいですよね(^_^;)。

 症状が咳喘息にぴったりなようでも、咳喘息以外の深刻な病気でないことを十分確認する必要がありますので、咳が長引く場合には医療機関で相談されることをおすすめします。