インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの効果

 平成26年から65才以上の方に肺炎球菌ワクチンの補助が受けられるようになり、お家に通知の手紙が来たという方も多いと思います。

 また毎年冬前にはインフルエンザワクチンを欠かさずうっているという方も多いのではないでしょうか。

 今回は実際にそれらのワクチンでどのような効果が期待できるのか、過去の臨床研究の結果からお伝えしたいと思います。
 
 これは1999年に報告された論文(Nichol KL et al Vaccine. 1999 Jul 30;17 )で、アメリカで慢性的な肺疾患と診断された方について、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを打った場合と打たなかった場合それぞれについて3年間の経過を観察した研究です。

nichol_肺炎球菌ワクチン_インフルエンザワクチン_論文表
 
 図に示す通り、インフルエンザワクチン単独でも入院が必要な患者さんが半分に減り、死亡率も70%減少しています。また肺炎球菌単独では入院率、死亡率共に3割減少しており、両方を接種していると、不幸にして感染症で命を落とされる方が8割減少したとのことでした。
 
 インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン共に、一般的には大きな副作用はほとんどなく、肺炎球菌ワクチンは一度接種すると5年以上効果があるとされています。
 
 勤務医時代には、重い肺炎にかかった方を多数診療してきましたが、その方がもしワクチンをうっていたらそこまで重くならなかったのではないか。そんな思いからワクチン接種を、呼吸器診療の柱と捉え積極的に接種を勧めてきました。

 当院でも是非たくさんの方にワクチンを利用していただき、少しの負担で得られる大きなメリットを享受していただきたいと思っています。(^^)

肺炎球菌ワクチンについて

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 日本人の死亡原因は 悪性腫瘍・心臓病・脳卒中 という順位が長年続いていましたが、2011年に肺炎は脳卒中を抜いて日本人の死因の第3位となり、今もその比率は増え続けています。
 
 肺炎球菌は一般の肺炎の原因菌の30%-50%前後を占めると言われており、菌血症(血液中に菌が巡る状態)や髄膜炎など重症の病態を伴いやすいことが知られています。

 また抗生物質が効きにくいタイプの肺炎球菌が増加していることもあり、最近特にワクチンによる予防に重点がおかれるようになっています。

 これを受けて2014年10月から定期接種として接種費用の補助が受けられるようになりました。

 現在定期接種の対象となっているニューモバックスを用いた高齢者施設入所中の方1000人前後を対象に行われた臨床試験(Maruyama et. al BMJ. 2010; 340: 1004) では予防接種を受けることにより 肺炎球菌性肺炎の発症を63%減らし、肺炎を発症した人の中でも重症化する方の数が明らかに少なかったという結果が出ています。

 私(院長)自身も病院勤務時代、肺炎球菌による肺炎で急激な悪化をたどった患者さんの経験が複数あり、皆さんいずれも一命は取り留めましたが、予防接種をしていればそのような事態は防げていたかもという思いを強くし、以後さらに積極的に予防接種を皆さんにおすすめするようになりました。

 ワクチンで防げる病気はできるだけ予防して健康で長生きしたいものです(^^)