風邪をひいた時に痰がのどに絡んで苦しい思いをしたという経験は皆さん誰しもお持ちかと思います。
一般的には厄介なイメージを持たれている痰ですが、呼吸器科診療では病気を診断するための重要な情報源として大事な役割があります。
医学用語では”喀痰”と呼びますが、喀痰の性質や検査からどのようなことがわかるのでしょうか?
喀痰の性質と病気について
いわゆる”風邪”の時には、最初は透明でさらさらした痰が出て、回復期になるにつれ、ねばねばした黄色い痰へと性質が変わり、次第に痰が減っていくという経過が一般的です。
また一般的なばい菌による肺炎の場合には、膿のような粘稠の喀痰が出ることが多いです。
喀痰に血が混じった状態(血痰)は、風邪などによるのどの炎症が原因であることも多い一方で、肺結核や肺癌など深刻な病気の症状として現れることもあります。
喀痰の細胞検査(喀痰細胞診)
喀痰を顕微鏡で見て、どのような細胞が含まれているかを確認する検査です。
アレルギーの際に活動する”好酸球”という細胞の比率が多ければ、喘息などのアレルギー疾患を疑うきっかけになります。
また喀痰の中に癌を疑うような細胞が見えて、それだけで肺癌が診断されることもあります。
ばい菌の検査(喀痰一般細菌・抗酸菌検査)
ばい菌による一般的な肺炎の場合には、出て来た喀痰を染色液で染めることで多数の菌が見え、その形や染まり具合で肺炎の原因菌がわかることがあります。
また咳が長引いて、それが喀痰を伴うような咳の場合には、頻度は稀ですが結核を疑う必要が出てきます。
結核は、喀痰の遺伝子検査で結核菌の遺伝子が見つかったり、培養検査で結核菌生えることにより診断されます。
また結核と診断された場合には、喀痰を顕微鏡で見てどのくらいの数の菌が見えるかで他の人に移る確率を推定することができます。
喀痰は内視鏡などと異なり、患者さんに苦痛を伴うことなく検査ができ、また得られる情報も非常に多いのが特徴です。
長引く咳で喀痰を伴う場合、呼吸器科的な診断・治療を要する病気が原因のことも多く、是非一度ご相談いただければと思います。