長引く咳の原因 −百日咳とは?−

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百日咳とは?

 百日咳といえば、子供さんがかかる病気というイメージを持たれている方が多いかと思います。
生まれたばかりのお子さんがかかると命に関わることもあり恐れられていた百日咳ですが、1950年台に日本で予防ワクチンが導入され、以後患者さんの数は減少しました。
 しかしワクチンの効果は一定期間経過すると弱くなることが知られており、最近はむしろ成人で百日咳の患者さんが増え、2006年には四国の大学で集団感染が報告されるなど、むしろ大人の病気として注目されています。
 呼吸器科診療では成人の長引く咳の原因として百日咳は重要で、3週間以上続く咳嗽の2-3割が百日咳によるものと考えられています。
 

百日咳の症状について

 いきなり発作的に咳が連続して始まり、息も吸えないほど続くのが特徴で、咳の合間の息を吸うときに「ひゅーっ」という音が出る「笛声:whooping」と呼ばれる症状が有名です。(youtubeなどで「whooping」と検索していただくと動画で見られます。)咳発作は夜間に起こることが多く、咳発作の最後には吐き気が起こったり実際に吐いてしまうこともあります。
 最初は風邪と思っていた咳がおさまらず、発症から1-2週前後で上記のような特徴的な苦しい発作咳の咳が出始めます。2-4週前後から次第に咳は減っていきますが、長い人は2−3ヶ月咳が続くこともあるため、「百日」という名前も決して大げさではないかと思います。
 

百日咳の検査について

 発症早期には実際に菌を排出しているため、咽頭からの菌の培養などが可能とされていますが、咳が続くという訴えで呼吸器科外来に来られた時には菌の排出が減っている時期になっていることも多く、なかなか培養検査などは難しいのが実情です。
 実際の診療では、上記のような特徴的な咳から診察医が臨床的に診断したり、血液検査で百日咳の抗体を測定し、総合的に判断します。ただし、抗体検査の結果が出るのには一定の時間がかかることや、厳密には抗体検査を数週間の間を置いて2回行わないと、抗体の上がり具合がわからないことも多く、百日咳と確定診断することは難しい場合も多くなります。
 

治療について

 発症初期に有効な抗菌薬を内服すれば、咳などの症状をやわらげることが可能ですが、実際にはある程度時間が経過し「長引く咳」となってから呼吸器科外来に受診される方が多いのが実情です。その時期には残念ながら抗菌薬を服用してもかかった方本人の咳はおさまらないことが知られており、抗菌薬治療ははむしろ排出する菌を減らして他の人への感染を防ぐという意味合いが強くなります。

アレルギー性鼻炎と喘息の関連について

アレルギー性鼻炎と喘息 ー切ってもきれない関係ー

 鼻から咽頭・気管・気管支は空気の通り道としてつながっており、アレルギー性鼻炎と気管支喘息は、昔から深い関係があることがよく知られています。それを反映して気管支喘息の患者さんの7-8割にアレルギー性鼻炎の合併があり、逆にアレルギー性鼻炎の方の2-3割に喘息の合併があると言われています。2つの疾患に関連が認められる理由としては、口呼吸になりやすいことや、アレルギー系の炎症細胞が共通であること、お互いが神経系を介して影響を及ぼし合っていることなどが考えられていますが、はっきりとした原因については未だわかっていません。

2つの疾患を合併した場合の治療で考えておくべきこと

 アレルギー性鼻炎と喘息の合併があった場合の基本方針としては、いずれか片方のみが悪化している場合にはそちらの治療を強化し、双方が悪化している場合には両方の治療を強化するということになります。ただし一般的には、増悪時には鼻炎と喘息のいずれもが悪化していることが多い印象を持っています。

本当に鼻炎だけ? 喘息だけ?

 アレルギー性鼻炎として長年治療を受けておられる方で、よくよく話をうかがうと風邪をひいた後に咳が長引いたり、「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」を自覚しているという方もこれまでおられましたし、実際に胸で「ぜーぜー」が起こっているけれども、鼻炎の症状がかなり強いため、ご本人はあまり自覚されていないということも稀にあるようです。お互いの疾患が合併することも多いという事実を多くの方に知っていただき、そういう目でご自分の症状を是非見なおしていただけたらと思います。

スギ花粉症に対する舌下免疫療法 −シダトレン開始1年目の効果について−

 2014年10月にスギ花粉症に対する舌下免疫療法が日本でも開始されました。

 1日1回スギ花粉のエキスを舌の下にふくんでから2分後に飲み込むというこの治療法は、花粉症に対するより根本的な治療で、しかも重いアレルギー反応が少ないことから非常に期待されてきました。

 一方で、毎日少なくとも2年以上は服用が必要なことや、治験では2割前後の方に効果がないという結果が出ており、実際の薬剤販売開始後の効果が注目されています。

 そのような中で2014年10月から2015年1月の間にこの治療を受け始めた人102人を対象に厚生労働省の研究班が行った調査結果が発表されました。

 結果については下図の通りで、およそ8割前後の方には効果がみられ、1/4の方に「とても効いた」という自覚があったとのことでした。

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 一般的に舌下免疫療法は開始後2シーズン目の方がより効果が出てくることがわかっており、
2016年の花粉飛散時期にはより効果を実感される方が多いのではないかと思います。

 毎年花粉シーズンになると、症状を抑えるために種々の治療が必要で大変という方、
花粉症自体や、薬の影響で集中力が低下し困っておられる方、
 花粉症に対するより根本的な治療法として、一度舌下免疫療法を検討されてもよいかもしれません。

インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの効果

 平成26年から65才以上の方に肺炎球菌ワクチンの補助が受けられるようになり、お家に通知の手紙が来たという方も多いと思います。

 また毎年冬前にはインフルエンザワクチンを欠かさずうっているという方も多いのではないでしょうか。

 今回は実際にそれらのワクチンでどのような効果が期待できるのか、過去の臨床研究の結果からお伝えしたいと思います。
 
 これは1999年に報告された論文(Nichol KL et al Vaccine. 1999 Jul 30;17 )で、アメリカで慢性的な肺疾患と診断された方について、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンを打った場合と打たなかった場合それぞれについて3年間の経過を観察した研究です。

nichol_肺炎球菌ワクチン_インフルエンザワクチン_論文表
 
 図に示す通り、インフルエンザワクチン単独でも入院が必要な患者さんが半分に減り、死亡率も70%減少しています。また肺炎球菌単独では入院率、死亡率共に3割減少しており、両方を接種していると、不幸にして感染症で命を落とされる方が8割減少したとのことでした。
 
 インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン共に、一般的には大きな副作用はほとんどなく、肺炎球菌ワクチンは一度接種すると5年以上効果があるとされています。
 
 勤務医時代には、重い肺炎にかかった方を多数診療してきましたが、その方がもしワクチンをうっていたらそこまで重くならなかったのではないか。そんな思いからワクチン接種を、呼吸器診療の柱と捉え積極的に接種を勧めてきました。

 当院でも是非たくさんの方にワクチンを利用していただき、少しの負担で得られる大きなメリットを享受していただきたいと思っています。(^^)

肺年齢 〜肺の実力を試してみませんか〜

 タバコによる肺の生活習慣病であるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が社会的な問題として注目されるようになり、喫煙歴のある方からCOPDの徴候をできるだけ早期に見つけ出し、治療に結びつけようという動きが盛んになっています。

 そのような背景から日本呼吸器学会を中心に「肺年齢」という概念が作られ、COPDの早期発見に役立てようとしています。
 
 肺年齢は呼吸機能検査(ふーっと思い切り吐けるところまで息を吹きかけるあの検査です−英語でスパイロメトリーと言います)によって測定された、1秒間に吐ける息の量(1秒量)と身長から性別により以下のような計算式により計算され、何才相当の肺の力があるかがわかります。

 男性:0.036×身長(cm)− 1.178 − 1秒量/0.028
 女性:0.022×身長(cm)− 0.005 − 1秒量/0.022
 
出てきた肺年齢や1秒量などの結果により
 A 異常なし
 B 境界領域
 C 肺疾患の疑い(要再検査)
 D COPDの疑い(要経過観察/生活改善)
 E COPDの疑い(要医療)
の5つのグループに判定され、状況に応じて病院への受診・詳しい検査などが勧められます。

 肺には一定の予備力があるため、タバコにより肺が障害され、ある程度「年老いた」状態でも、ご本人は息切れなどを感じていないことも多々あります。
 またCOPDと診断された場合にも、ある程度早い段階であれば吸入薬による治療でその後の肺の衰えを遅らせることができます。
 喫煙歴がある方は、呼吸機能検査を是非一度医療機関で受け、肺の実力をチェックしてみてください。(^^)