長引く咳の原因 ー咳喘息についてー

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 喘息というと呼吸をする時に「ひゅーひゅー」「ぜーぜー」が起こる病気として皆さんご存知の方も多いと思います。「喘鳴」と表現される上記の症状は喘息に典型的な症状ですが、喘鳴や呼吸困難が出ず、咳のみが症状として現れる「咳喘息」という病気があります。

 この病気は喘息の前段階もしくは亜型と考えられていて、無治療の場合一般的に30%前後の方が喘息に移行するといわれています。

 咳喘息は長引く慢性的な咳の原因として頻度が最も多く、呼吸器外来をしていると咳喘息に典型的な症状の患者さんが多く来られ、正しく診断をして適切な治療をすると咳が劇的に減り、患者さんに喜んでいただけることも多いため診療側としても診療しがいのある病気の一つです。

咳喘息の咳の特徴としては

  • 喀痰はそれほど多くなく空咳中心
  • 就寝時から明け方に咳が多い
  • 冷たい空気、タバコの煙、会話、運動、飲酒、精神的緊張などが誘引となって咳が出る
  • アレルギー素因のある人に多い

などがあります。

咳喘息の治療としては喘息に準じた治療(吸入ステロイドなど)を行い、治療を開始すると比較的速やかに咳が消失することが多いのもこの病気の特徴です。

 風邪を引いた後に咳が長引きがちだけどいつも我慢しているという患者さんも多く、そういった患者さんの中にも咳喘息の要素を持った方が比較的多くおられます。

 咳が出ていると周りにも気を遣いますし、咳がひどい場合には不眠になったり食欲が落ちたりと本当にやっかいですよね(^_^;)。

 症状が咳喘息にぴったりなようでも、咳喘息以外の深刻な病気でないことを十分確認する必要がありますので、咳が長引く場合には医療機関で相談されることをおすすめします。

肺炎球菌ワクチンについて

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 日本人の死亡原因は 悪性腫瘍・心臓病・脳卒中 という順位が長年続いていましたが、2011年に肺炎は脳卒中を抜いて日本人の死因の第3位となり、今もその比率は増え続けています。
 
 肺炎球菌は一般の肺炎の原因菌の30%-50%前後を占めると言われており、菌血症(血液中に菌が巡る状態)や髄膜炎など重症の病態を伴いやすいことが知られています。

 また抗生物質が効きにくいタイプの肺炎球菌が増加していることもあり、最近特にワクチンによる予防に重点がおかれるようになっています。

 これを受けて2014年10月から定期接種として接種費用の補助が受けられるようになりました。

 現在定期接種の対象となっているニューモバックスを用いた高齢者施設入所中の方1000人前後を対象に行われた臨床試験(Maruyama et. al BMJ. 2010; 340: 1004) では予防接種を受けることにより 肺炎球菌性肺炎の発症を63%減らし、肺炎を発症した人の中でも重症化する方の数が明らかに少なかったという結果が出ています。

 私(院長)自身も病院勤務時代、肺炎球菌による肺炎で急激な悪化をたどった患者さんの経験が複数あり、皆さんいずれも一命は取り留めましたが、予防接種をしていればそのような事態は防げていたかもという思いを強くし、以後さらに積極的に予防接種を皆さんにおすすめするようになりました。

 ワクチンで防げる病気はできるだけ予防して健康で長生きしたいものです(^^)

スギ花粉症に対する舌下免疫療法について

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 このブログをごらんの方で春先になると毎年憂うつになるという方はおられませんでしょうか? 
春先といえば花粉症の季節。

 これまで花粉症にはアレルギーを抑えるタイプの対症療法的な薬が中心に使われてきましたが、からだにアレルゲンを投与して徐々にアレルゲンに慣らしていくという根本的な治療法(免疫療法・減感作療法などと呼ばれてきました)が長年研究されてきました。

 2009年からスギ花粉症の患者さんに対してスギから取り出したアレルゲンの成分を注射液として定期的に注射するという治療法が一般に開始されましたが、定期的に通院して注射が必要であることや注射部位の腫れや痛みなどの副作用もあることなどからなかなか広く普及するというまでには至りませんでした。
そこでアレルゲンを舌の下に入れて飲み込むというタイプの新しいスギ花粉症の治療薬が2014年10月に発売となり新聞やテレビなどで大きな話題となっています。

  • 非常に稀(1億回に1回程度)ではあるものの投与後重いアレルギー反応が起こることがある
  • 花粉が飛んでいない時期にも毎日服用が必要で年単位(3年以上)での継続が望ましい
  • 治療をした人全員に効果があるわけではなく2-3割の人には効果が乏しい
  • 少なくとも1ヶ月に1回の通院が必要(2015年10月までは2週間に1回)

など、治療前にご理解いただくべきことはあり、なかなか3年間も続かない(^_^;)と思われる方も多いかもしれませんが特に症状が重く、毎年ゆううつな数ヶ月を送っているという方は使っている抗アレルギー薬が少しでも減らせる可能性もあり、検討に値する治療法ではないでしょうか。

スギ花粉症の舌下免疫療法薬(シダトレン)は講習・登録を受けた医師のみが処方できるシステムになっており、私自身も講習を終了して開院後はシダトレンを多くの患者さんに使っていただければと考えています。